MAKERS UNIVERSITY

STUDENT INTERVIEW
塾生インタビュー

MAKERSに入り、挑戦する上での孤独が大きく変わりました。仲間やメンターとの対話を通じ、この課題から絶対に降りないためなら、手段は変えていい。そう思えるようになったことが、私にとって最も大きな変化です。

小黒江莉果さん

一般社団法人Japan Animal Shelter Alliance 代表

MAKERS UNIVERSITY 11期生

Q.
MAKERS UNIVERSITYに応募する前はどんな想いで、どのようなことに取り組んでいましたか?

大学在学中にロサンゼルスのアニマルシェルターでボランティアをしたことが、すべての出発点でした。そこは「家族のいない犬猫を収容する場所」ではなく、子どもから高齢者までが集い、動物を真ん中に地域がつながるコミュニティハブでした。同時に、その現場を科学的に支える「シェルターメディスン」という獣医学領域を知り、日本にも根付かせたいと考えるようになりました。
MAKERS応募当時は、フロリダ大学大学院で研究を続けながらJapan Animal Shelter Allianceを立ち上げ、アカデミックな発信に取り組む一方、保護施設向けシステムのプロトタイプ開発も進めていました。研究だけでも、現場支援だけでも変えきれない構造を、事業という手段で変えたい。複数のアクセラレータにも参加し、ビジネスモデルや資本政策まで学びながら、「日本の動物保護の課題を、経済活動を伴う形でどう解くか」を模索していた時期です。

Q.
現在はどんな事業やプロジェクトに取り組んでますか?その事業やプロジェクトに挑む背景や想いも含めて教えて下さい。

現在は、2026年8月に一般社団法人化したJapan Animal Shelter Alliance(JASA)を軸に、シェルターメディスンの普及、災害時の動物支援、現場支援、データ基盤づくりに取り組んでいます。並行して、保護施設向け管理システム「ShelterLog」の開発と現場導入も続けています。日本の動物保護は、いまも紙やExcel、LINE、個人の記憶に依存する現場が多く、何頭を受け入れ、何頭が譲渡され、どれくらい滞在しているのかという基本データさえ十分に残りません。データがなければ改善もできず、社会からの信頼も積み上がりにくい。私は、透明性が信頼をつくり、信頼が支援を呼ぶ循環をこの領域につくりたいと思っています。以前は「収益を生みながら解決すること」を強く意識していましたが、いまは営利・非営利という器から逆算せず、課題に本当に必要なことから逆算して手段を選ぶようになりました。

Q.
MAKERS UNIVERSITYにはどんな想いや期待感で応募しましたか?

MAKERSに応募した理由は、今でもよく覚えています。夢や目指す社会に向かって走り続ける日々の中で、ふと「ペンとノートだけを持って山にこもり、人生や社会について本気で語り合える仲間がほしい」と思ったんです。当時はいくつものアクセラレータに参加し、先輩起業家と出会う機会はありました。でも同年代で、事業の話だけでなく、自分の弱さや葛藤、なぜ生きるのかというところまでぶつかり合える相手には、なかなか出会えませんでした。
動物保護という領域を一人で走り続けることへの孤独も、どこかにずっとありました。MAKERSなら、何かに人生を賭けている同世代と出会える。その中に自分を放り込むことで、自分自身も変われるのではないか。そんな期待を持って応募しました。

Q.
実際にMAKERSに参加してみて、自身にとってどんな変容や進化がありましたか?

一番の変化は、事業の速度や成長で自分の挑戦を測るのをやめたことです。参加した頃の私は、資本主義の中でいかに成功するかを考え、社会課題の解決と収益化を一つの事業で成立させようとしていました。ところが現場に出れば出るほど、「目の前の命すら救えていないのに、一番遠回りな仕組みづくりをしているのではないか」という葛藤が大きくなり、一時はここ数年で最も前に進めなくなりました。
転機は熊本での災害支援です。2週間現場に入り続けても、不思議なくらい動き続けられた。そこで、苦しかったのは現場ではなく、厳しい現実を前にしながら同時に「ここからどう稼ぐか」を考え続けることだったと気づきました。いまは売上だけではなく、現場のニーズにどれだけ応えられたかを成果として見ています。この課題から絶対に降りないためなら、手段は変えていい。そう思えるようになったことが、私にとって最も大きな変化です。

Q.
荻原ゼミが自分自身や事業に与えた影響、メンターである荻原さんとのやりとりで印象に残っていること、また、月1ゼミでの学びや気づきを教えて下さい。

荻原ゼミは、月に一度、自分の意思決定と迷いをそのまま吐露できる場所です。現場に出るほど苦しくなっていた時期に、周りからは「まず稼げるところで稼いでから、やりたいことをやれば」と言われていました。それをゼミに持っていったとき、荻原さんに「進んでいるから悩んでいる。進んでいなかったら悩みはない」と言われました。そして、遠回りなのか最短距離なのかは立場によって違う、あなたの場合はシェルターメディスンの専門性と現場感覚がこの領域にとって固有のもので、それ以外で稼ぐことはむしろその強みを希薄化する、と。人生の目的と手段を逆転させてはいけない、と教えてもらいました。
1on1ではなくゼミという形だから、他のメンバーの葛藤も聞ける。誰よりも温かく見守りながら、必要なときには驚くほど的確な言葉をくださる。だから自分の選択ひとつひとつが「間違っていない」と自分に言い聞かせられるんです。

Q.
MAKERS UNIVERSITYに入学してから、一番印象に残っている出来事は何ですか?

一番印象に残っているのは、第3回目の荻原ゼミで、みんなの前で涙が止まらなくなった日です。現場に出るほど「目の前の命すら救えていないのに、一番遠回りなことをしているのではないか」という葛藤が膨らみ、そのまま報告に臨みました。話しているうちに、気づけば涙が溢れていた。明るさだけが自分の取り柄だと思っていたので、人前で泣ける自分になっていたことに、自分がいちばん驚きました。その場で見えたのは、「仕組みを変えたい」という目的で始めたはずなのに、いつの間にか「事業として成功すること」が目的になっていたということです。
荻原さんから「仕組みをつくれる人材は希少なんだから、胸を張っていい」と言ってもらい、同期の言葉にも支えられました。応募時に願った「ペンとノートを持って山にこもり、本質的な話ができる仲間がほしい」が、本当に現実になったと感じた瞬間でした。

Q.
MAKERSに入ったからこそ得られたことや、MAKERSがあってよかったなと感じていることを教えてください。

MAKERSがあってよかったと最も感じるのは、挑戦する上での孤独が大きく変わったことです。以前は、周囲に同世代の起業家が少なく、自分の迷いや葛藤をどこまで共有していいのか分からない感覚がありました。MAKERSには、領域も事業フェーズも違うけれど、それぞれが何かに本気で向き合い、同じように悩みながら進んでいる仲間がいます。だから、成功談だけでなく、弱さや迷いもそのまま共有できる。誰かの悩みが自分の問いになり、自分の経験が誰かの支えになる。その関係性の中で、「一人で全部背負わなくていい」と知れたことは大きかったです。事業上のネットワーク以上に、進捗の有無に関わらず、長く人生を共に走れる仲間に出会えたこと。それが、MAKERSで得た最も大きな財産です。

Q.
学生向けの起業支援プログラムやビジネススクールが沢山ある中で、MAKERS UNIVERSITYがそれらと違うのはどこだと感じますか?

MAKERSが他の起業支援プログラムと最も違うのは、事業だけではなく「その人自身」を問い続けるところだと思います。ビジネスが優れているから選ばれているのではなく、事業のフェーズも領域もバラバラなのに、人として熱い人が集まっている。私自身、他のアクセラではビジネスモデル、資本政策、投資家への伝え方など、事業を成長させるための多くのことを学びました。
一方MAKERSでは、「なぜあなたがこれをやるのか」「その事業は本当に目指す社会につながっているのか」という、もっと根本の問いから逃げられません。その結果、私は株式会社まで設立しながら、最終的には非営利を主軸にするという、応募時とは真逆にも見える選択をしました。特定の事業案を成功させるためではなく、自分が人生を通じて何を成し遂げたいのかを見つめ、そのためなら手段さえ変える。その覚悟を育てる場所であることが、MAKERSの大きな違いだと思います。

Q.
あなたとってMAKERS UNIVERSITYを一言で表すと何ですか?

「人生の軸を取り戻す場所」です。

起業していると、売上や資金調達、成長率、周囲からの期待など、気づけばたくさんの“正解らしきもの”に囲まれます。私も、社会課題を解くならビジネスとして成立させるべきだと考え、その前提の中で答えを探していました。MAKERSでは、その前提そのものを疑い、「そもそも何を実現したかったのか」「自分はなぜこの課題に向き合うのか」に何度も戻されました。仲間やメンターとの対話を通じて、手段を守るのではなく、自分が信じる未来を守る。そのためなら進路を変えてもいいと思えるようになった。迷った時に何度でも原点へ戻れる場所、それが私にとってのMAKERSです。

Q.
あなたの人生や事業を通じて「こんな世の中・こんな未来を実現したい!」というビジョンを教えてください。

私が実現したいのは、資本主義の枠組みでは救えない命に向き合い、必要な支援がちゃんとつながる社会です。動物保護の現場には、強い善意や使命感を持つ人がたくさんいる一方で、その努力が個人の自己犠牲に依存し、仕組みやデータが不足していることで疲弊していく現実があります。私は、シェルターメディスンという科学、現場で蓄積されるデータ、テクノロジー、そして人の善意をつなぎ、動物保護を持続可能な社会インフラに変えたい。保護施設が「かわいそうな動物がいる場所」ではなく、人と動物、地域がつながるコミュニティハブになる未来をつくりたいです。資本主義か非営利かという手段に縛られず、必要な課題に必要な形で向き合い続けること。それを自分の人生を通して実現したいと思っています。

(*このインタビュー記事は、2026年9月時点のものです)

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メディア掲載歴

「シェルターメディスン」ってなに?―人間も動物も大切にするための鍵として(Researchers in WISER#1)
知って、つなげる場所を増やす―非営利と企業との役割の違いを活かした動物福祉の展開へ―(Researchers in WISER#2)
全力イノベーターズ~SDGsに挑むZ世代~動物をハッピーに|テレビ東京
【ペットと避難】同伴避難の現実は?ゾーニングは難しい?“家族の一員”をどう守る?避難所の課題を考える|アベプラ

PROFILE

一般社団法人Japan Animal Shelter Alliance 代表理事 / 株式会社ShelterMate 代表取締役
大学在学中にロサンゼルスのアニマルシェルターでボランティアをしたことをきっかけに、シェルターメディスン(保護犬・保護猫のための獣医学)と出会う。フロリダ大学大学院で同分野を修了し、テキサスA&M大学では災害獣医学の客員研究員として、自治体向けのペット同伴避難マニュアル作成や災害シミュレーションに携わる。日本では2024年に任意団体としてJapan Animal Shelter Allianceを立ち上げ、海外の科学的知見の翻訳・普及、全国での講演、オンライン勉強会を実施。2026年2月に株式会社ShelterMateを設立し、保護施設向け管理システムを開発。同年8月にJapan Animal Shelter Allianceを一般社団法人化。

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