MAKERS UNIVERSITY

STUDENT INTERVIEW
塾生インタビュー

その土地に住む人たちのニーズをくみ取り、医療者として、現場から患者の幸せを追求していきたい。

宮地 貴士さん

秋田大学医学部医学科5年次(休学中)

MAKERS UNIVERSITY 4期生

Q.
MAKERS UNIVERSITYに応募する前はどんな想いでどんな活動に取り組んでいましたか?

アフリカ・ザンビア共和国の僻地に診療所を建設するために、日本国内でザンビア風お好み焼きを販売し、診療所設立のためのお金を集めていました。

活動の原点は中学生のときに国境なき医師団を知ったことです。自分の力ではどうしようもない環境にいる人たちを救いたいと思いました。ザンビアでの活動は、まさに願っていたことでありドンピシャの活動でした。無我夢中で取り組みました。最寄りの医療施設まで歩いて4時間、安全な出産ができない現状、マラリアなどの病気で失われる命、自分の活動によって少しでも多くの命を救いたい、その一心でした。

日本でのお金を集めるという活動によって直接的に現地の人の命を救うことはできません。それでも、日本で応援してくれる人や現地に僕が行くたびに喜んでくれる村人たちに支えられ、活動を続けていました。

Q.
現在はどんな事業やプロジェクトに取り組んでますか?

現在は大学を休学してザンビアに来ています。こちらでは主に2つの事業をしています。

まずは、これまで取り組んできた診療所建設活動です。今年12月の運営開始に向けて、土地の所有者である現地NGOや運営主体である政府、村人、建設会社などと調整を続けています。もう一つは、新たに始めた現地の医療系学生向けの私塾です。こちらの学生と話していて驚くことがありました。彼らの多くが私が知っている起業家兼医師のザンビア人や10年以上に渡ってザンビアのへき地医療に従事する日本人医師のことを知らなかったのです。「パッションをもって必死にザンビアで活動する人々と現地の医療系学生を繋ぐことで、何か生まれるのではないか」そう思い、活動を始めました。多少の違いはありますが、簡単に言うとMAKERS UNIVERSITYのザンビア医療系学生版でしょうか。

Q.
MAKERS UNIVERSITYにはどんな想いで応募をし、参加しましたか?

2年間に渡りザンビアで診療所建設に取り組む中で、数々の失敗を経験しました。
例えば、パートナーだと思っていた人に20万円を盗まれたり、活動資金をめぐる村人同士の対立からある村が分裂したり、です。「このままではいけない。どうにかしないと」そう思い、悩んでいるときにMAKERS UNIVERSITYを見つけました。

当時の私は、ボランティアとして慈善活動に取り組んでいるから、それが相手を甘やかし、事業がうまくいかない原因になっているのだと考えていました。「MAKERSに入塾すれば”ビジネスの仕方”を学べるのではないか。特に最近流行りのテクノロジーを使った何かを学んでイノベーションを起こそう」今振り返ると、かなり浅はかで恥ずかしいですが、そんな理由からMAKERSに応募しました。(笑)

Q.
実際にMAKERSに参加してみて、自身にとってどんな変化や進化がありましたか?

もっと人と向き合おうと思いました。
MAKERSでは様々なメンターに対して学生が事業ピッチをする場があります。メンターと学生のやり取りを見て、また、私自身も実際にピッチをして分かったことがあります。それは、メンターはまず”人”を見ているということです。
ビジネスモデルやマーケットの大きさといった小手先のことではなく、「こいつは本当にやりきる覚悟があるのか」という”人”の部分を重視していると実感しました。

それらを体感して、自分のこれまでの活動を振り返ってみると頭が痛くなりました。
全然、人に向き合っていなかったことに気づいたからです。
現地では本気で語り合い、夢を共有したような仲間はいませんでした。
信頼できるパートナーがいなかったからこそ、失敗ばかりしてたのです。

「ビジネスモデルやテクノロジー云々の前にもっと人と向き合おう」「相手を理解しよう」「自分の夢を皆の夢にしよう」 MAKERSに参加したことで人生において基本となる考え方が身についたと思います。

Q.
小沼ゼミが自分自身や事業に与えた影響、メンターである小沼さんとのやりとりで印象に残っていること、また、月1ゼミでの学びや気づきを教えて下さい。

印象に残っていることは、私が“人間”として欠落している部分をズバズバと指摘してくれることです。
本気で怒ってくれる人、本音で指摘してくれる人、この年齢になると、なかなか出会えません。本気で怒ることも、指摘することも、ものすごく労力を使うことだからでしょう。テクニカルなことを指摘するだけのほうが100倍楽です。知識や経験を共有するだけだからです。怒ることは相手を深く理解しないとできません。

小沼さんは最初のゼミで、30分以上かけて自分が何をしたいのか、どういう課題があるのかを、とても丁寧に聞き出してくれます。その情報を基に、毎月のメンタリングでは自分の弱い部分、特に人との向き合い方について重要なポイントをズバズバと指摘してくれます。
また、先日のゼミの際に、ふと気づいたのですが、小沼さんは、毎回のゼミ生とのメンタリング記録をタブレットに記入してくれています。その面倒見の良さに心底感動しました。(笑)

Q.
MAKERS UNIVERSITYに入学してから、一番印象に残っている出来事は何ですか?

MAKERSの数あるプログラムの中で一番をあげるのは非常に難しいです。
志を持って社会変革に挑む仲間たちとの出会いも非常に魅力的です。無理やり順位をつけるとしたら、メンターである小沼さんとの出会いでしょうか。小沼さんがゼミ生や自分に向き合う姿勢を見て、自分自身の課題が分かったからです。

小沼ゼミでは、MAKERS第一期生のNPO法人WELgee代表の渡部清花さんも参加してくれています。WELgeeという団体を立ち上げ、日本国内に住む難民の支援活動に取り組む方です。清花さんがどのように事業を始め成長させてきたか、現在どのような課題があり、作戦を練っているか。大先輩の挑戦の軌跡とgoogleでググっても決して出てこない”起業家”のリアルを間近に見れるのは非常に贅沢です。小沼さんや清花さんとの会話の中から盗めるものを盗み、WELgeeの期間はスポーツでいう「守破離」の守の部分を徹底的に身につけたいと思います。

Q.
MAKERSに入ったからこそ得られたことや、MAKERSがあってよかったなと感じていることを教えてください。

MAKERSは起業家マインドを持ち、世の中ををもっとわくわくさせようとする若者たちのコミュニティです。
MAKERSに入ったときは自分がどのようにしてザンビアと関わっていくか、迷っていました。しかし、MAKERSのプログラム期間中の数々の出会いや自分や他人と向き合った経験から、こういう”熱いコミュニティ”をザンビアに作りたいと思うようになりました。大きな活動のヒントを得たため、とても感謝しています。

また、同志との出会いは自分を謙虚にさせ、さらに飛躍するエネルギーになりました。頑張っている仲間が側にいることは非常に心強いですし、競争心に火が付きます。今後も密に情報を共有しながら、お互いのフィールドで挑戦を続けたいと思います。

Q.
学生向けの起業支援プログラムやビジネススクールが沢山ある中で、MAKERS UNIVERSITYがそれらと違うのはどこだと感じますか?

他のプログラムには参加したことがありません。
また、プログラムを見ても惹かれませんでした。では、なぜMAKERSには惹かれてしまったのか。それは、MAKERSの1期生・2期生・3期生の先輩方が非常に素敵だったからです。イベントなどで知り合い「この人かっこいいな」と思った人たちは、みんなMAKERSの先輩たちでした。2期生の新荘さんや真輝さん、MAKERS U18のまおちゃん、3期生の渋川くんなどです。

みんな目が輝いてますし、話しているだけでこっちがワクワクしてくる、そんな不思議な体験をしました。MAKERSの宣伝文句で「この惑星(ホシ)にワクワクを」とあります。この惑星に住んでいるのは私たち人間です。目の前の人間をワクワクさせることができなければ、惑星をワクワクさせられません。人間を地域を世界を、そしてこの惑星をワクワクさせるMAKERS生。私もその仲間入りをしたいと思い、参加を決めました。

Q.
あなたとってMAKERS UNIVERSITYを一言で表すと何ですか?

世の中をわくわくさせる若き志士たちのサラダボウルです。
世界を動かしてきたのはいつの時代も尖った考え方を持つ”変人”たちです。MAKERSにはこれから磨かれる石や輝き始めた石、もう既に切れ味鋭い石など多様な人材がいます。時にぶつかり合い、欠けたり、混ざったりしながら、自分たちに最適な形に変わっていきます。

「卒業のないコミュニティ」という表現も素敵です。MAKERS期間中、そして、自分の代が終了した後も交流の場は数多く組まれています。それぞれのフィールドで第一線を走る熱量が高い人たち。彼らが集まるだけで何かがどんどん生まれそうです。このサラダボウル最大の特徴は、伸縮性が高く収容力が無限大なことです。どんなに弾ける石が来ても優しく包み込んでくれます。それを支えるのは、献身的なMAKERS UNIVERSITYの事務局の方々です。本当に多様なプレイヤーが活躍し、”もう一つの大学”が出来上がっています。

Q.
あなたの人生や事業を通じて「こんな世の中・こんな未来を実現したい!」というビジョンを教えてください。

医療者の存在意義は患者さんを幸せにすることです。
縁があった土地に住む人たちのニーズをくみ取り、現場で診療にあたりながらどうすれば患者の苦痛を減らせるか、考えていきたいと思います。また、医療は文化であり、患者の価値観や社会的背景に深くかかわっています。外国人である私がずかずかと異国の地に入っていき、自分の価値観の下に医療行為を行うことは反対です。だからこそ、現地を理解したパートナーが必要です。彼らと協力しながら、日本での経験をどのように異国のため活かせるのか。また、異国での経験をどのようにしたら日本の医療に応用できるのか。お互いの文脈を掛け合わせ、現場から患者の幸せを追求していきたいと思います。そして、そのような考えの仲間を日本にも海外にも増やしていきたいです。

(*このインタビュー記事は、2019年9月時点のものです)

関連URL

This is my Zambia.

メディア掲載歴

メディカルトリビューン
朝日新聞秋田版
秋田魁新報

その後の活躍

休学してザンビアの無医村に診療所を設立 国際化へ舵を切る医学生たち

PROFILE

宮地 貴士

秋田大学医学部医学科5年次(休学中) 1997年東京都北区出身。
2017年3月、ザンビア共和国で医療支援をする学生団体、ザンビア・ブリッジ企画を発足。
19年4月より休学しザンビアで活動中。同国僻地での診療所開設と現地医療系学生向けの情熱教室に取り組んでいる。
受賞歴:日本学生支援機構優秀学生顕彰 社会貢献部門 大賞
秋田大学学生顕彰 学長賞

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