MAKERS UNIVERSITY

STUDENT INTERVIEW
塾生インタビュー

世界で唯一の繊維加工技術を用いた高機能性衣料の開発をする

長曽我部 竣也さん

岐阜大学大学院 物質・ものづくり工学専攻 修士1年

MAKERS UNIVERSITY 5期生

Q.
MAKERS UNIVERSITYに応募する前はどんな想いで、どのようなことに取り組んでいましたか?

学部4年次(2019年度)に高分子を扱う研究室に入り、今年度から大学院(同じ研究室)でプラスチックの物性(強度や伸び縮みなど)を研究しています。
研究室に配属直後、教授から紹介された一つの技術に魅力とその可能性を感じました。以前研究室でその技術を使った共同開発が行われ、民間企業と試作品まで作製したものの販売には至りませんでした。そこで、大学研究成果であるこの技術を私が社会実装して世に広めたいと考え、事業化に向けて進めています。

Q.
現在はどんな事業やプロジェクトに取り組んでますか?その事業やプロジェクトに挑む背景や想いも含めて教えて下さい。

「岐阜大発、世界で唯一の繊維加工技術を用いた高機能性衣料の開発」をしています。
この技術は、ある破壊現象の研究から始まりました。
もともと、工業的にはこの現象の発生を防ぐことが当たり前だったのですが、これを応用することで、新しい分野を開拓しました。これは世界でも我々の研究室だけが持つユニークな技術です。私はこの技術が秘める可能性を信じ、これを社会実装するべく事業化を進めています。

昨年からビジコンで入賞させて頂いたり、海外へ展示するチャンスを頂いたりして事業化を進めておりますが、今年に入ってコロナウイルスの影響で海外派遣が中止になり、効果試験や研究開発は一定期間行えず、さらに一つのプロジェクトは中断になるなど、少なからず精神的なダメージもありました。しかしながら事業化への想いは消えておらず、諦めることなく続けています。まだまだ未熟ですが、この事業を全力でやり抜きます。

生まれ育った愛知県一宮市は、岐阜県羽島市とともに「尾州」と呼ばれ、繊維産地として世界的に有名です。
高度経済成長期に日本の繊維産業は最盛期を迎えましたが、近年は中国な東南アジアの安い原価・労働力に取って代わられ、衰退傾向にあります。
生まれてから地元のシャッター街が目につきそこに違和感を覚えており、この技術で少しでも活性化に貢献したい思いがあります。

Q.
MAKERS UNIVERSITYにはどんな想いや期待感で応募しましたか?

地方では得られない、東京だからできることを前提に、主に3つの目的・期待を持って応募しました。

1つ目は、起業してビジネスを立ち上げるための具体的なアクションプランを、メンタリング等を利用して明確にすることです。経営の知識が浅い上、そもそも本格的に働いたことがなく何をすれば良いのか全く分からなかったため、経験豊富な経営者のメンターの方々にアドバイスを頂きたいと思いました。

2つ目は、これから自分のビジネスを始める上で必要な、経営者としての考え方やマインドセットを学ぶことです。メンターの方々とのコミュニケーションを通じて自分に足りないものをたくさん吸収していきたいと考えました。

3つ目は、MAKERSで様々な価値観を持った同期やメンターの方々との意見交換やディスカッションを通して改めて自分を見つめ直し、”自分はどうありたいのか”を考える機会を作ることです。
MAKERS5期生となり、1年間メンターの方々や日本全国から集まった同期との意見交換を通して起業への具体的なイメージを固めるとともに、本格的に提携企業と新商品の開発・販売を実現したいと考えました。

Q.
上村ゼミが自分自身や事業に与えた影響、メンターである上村さんとのやりとりで印象に残っていること、また、月1ゼミでの学びや気づきを教えて下さい。

上村さんが産学連携のご経験があるということを聴いて、上村ゼミを志望しました。ゼミ生は自分を含め3名で、2人とも大学院で技術系の事業に取り組む同志でした。
上村さんには自分と関連のある会社さんをご紹介頂いたり、会社をスケールさせるための10年後のビジョンやマイルストーンの考え方を教えて頂きました。

どうしても技術の説明に偏りがちになる自分に対して、ビジネスサイドの視点からアドバイスを頂いており、大変勉強になっています。
月イチのゼミでは3人がそれぞれ進捗状況を報告し、ご相談事項を上村さんに投げかけるのですが、どの回答も各々にとって新しい気付きが多く、また自分のメンタリング時間でなくても抽象的な表現をして頂けるので、自分の事業に置き換えて考えることができるので学びが多いです。

Q.
MAKERSUNIVERSITYに入学してから、一番印象に残っている出来事は何ですか?

2月の合宿の最後のチェックアウトの時間(感じた事や思ったことを言い合う時間)です。その時間で感じたことは2つあります。

1つ目は「自己開示」。
今まで、自分の苦しかった過去を親を含め他人に話したことがありませんでした。それには2つの理由があり、一つは誰も興味ないであろうから話す必要はないと思っていたこと、もう一つは自分が過去の出来事にきちんと向き合っていなかったこと。そんな中で、50人もの同期がそれぞれ辛い過去や想いを吐き出していた光景に心を動かされ、初めて自分の過去を言語化しました。共感し合える同期に出会えたことは本当に貴重です。

2つ目は「決断」。
約1年プロジェクトを進めてきた中で、多くの方から将来について訊かれたときに明確に答えることができていませんでした。自分の中で迷いがあり、振り切ることができていなかったですが、今回のキャンプで同期とお互いに励まし合い、先輩方からアドバイスを頂き、カリキュラムの中で提供して頂いた「問い」に深く向き合うことを通して、今やっていることに全力でコミットすると決断しました。

Q.
MAKERSに入ったからこそ得られたことや、MAKERSがあってよかったなと感じていることを教えてください。

同じ境遇や問題を共有し合える同期の存在は大きかったです。
地方で活動していても、自分のような学生は少なく、似た分野となるとほとんどいないというのが現状でした。ご相談できる先輩はいるのですが、事業のフェーズが異なり、今の問題などを気軽に話せないでいました。MAKERSでは同世代の仲間ができ、それぞれの事業だけでなく精神的な悩みも気兼ねなく共有できるので、とても心強いです。

また、ロールモデルに近い起業家の先輩方からの助言にも影響をうけました。
日本を代表する起業家の先輩方のお話を間近で聴けたことは、とても刺激になりました。また、彼らも自分と同じ年代のときは似たような悩みを抱えていたことが知れて、励みになっています。経験豊富な起業家の先輩方が自分たちのために時間を割いてアドバイスを頂ける機会は、MAKERSというコミュニティに所属しているからこそ得られるものです。

Q.
学生向けの起業支援プログラムやビジネススクールが沢山ある中で、MAKERS UNIVERSITYがそれらと違うのはどこだと感じますか?

MAKERSは、中期の合宿形式プログラムなので、初めて会った日から長い時間をともにするため、お互いの理解が深まりやすいなと思います。そこから、同期との仲の深さに繋がっていますね。
また、事務局の方々のサポートが一段と厚いのも他の起業支援プログラムと違う部分だと思います。
合宿における起業家の講演やワークショップはもちろんのこと、それ以外の時間も様々な情報を共有して頂いたりメンターとの定期的なミーティングを設けて頂いたりしてくださるのでとても有難いです。
1年間の正式なプログラムが終わった後もメンターとの密な繋がりが持てるのも特徴ですね。
1〜4期生の中で一定数MAKERSとの密な関係を続けられている方がいらっしゃり、正式な1年が終わっても同期だけでなくメンターや事務局さんとの繋がりを継続することができる、まさに「卒業のない学校」ですね。

Q.
あなたとってMAKERS UNIVERSITYを一言で表すと何ですか?

「背中を押してくれる場所」
地元では自分と同じような学生は少なく、マイノリティな立場なので周りからは違った目で見られます。(メディアに取り上げて頂けるなど)もちろん良い面もありますが、常に様々な課題に悩まされ、不安や孤独感に苛まれることが事実です。地方でも頼れる先輩がいらっしゃることは大変有難いですが、同じフェーズに置かれている同期は少ないのが現状です。

押しつぶされそうになったときや苦しい思いをしている中で、ふとMAKERSプログラムに参加したり同期と話したりすると、とても励まされます。ともに頑張っている仲間や力強い先輩方の話を聴くと、「自分は間違っていない、まだまだできる」と感じます。この環境が自分の背中を押して頂ける、私にとってそんなコミュニティです。

Q.
あなたの人生や事業を通じて「こんな世の中・こんな未来を実現したい!」というビジョンを教えてください。

「すべての人が、自分の可能性を広げられる世の中に」
私は小・中学校時代に長い間、辛い経験をしました。自殺を考えたほどで、ずっと自分の殻に閉じこもっていました。
しかし、高校や大学で様々なことにチャレンジし始め、失敗ばかりではありますが、それらを通じて自分の見える世界が広がっていくことを実感しました。今までには考えられないほど自分の視野が広がり、まだまだ未熟ながらも、自分でも可能性に溢れていると感じています。
そんな自分の原体験から、自分と同じ境遇を経験した人や自信をなくした人に少しでも勇気を持ってもらいたい、ポジティブな影響を与えられたらと思い、今の自分の挑戦が一つの手段となり得ると信じています。

(*このインタビュー記事は、2020年9月時点のものです)

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メディア掲載歴

中日新聞「岐阜大に「起業部」誕生」
・岐阜新聞

PROFILE

長曽我部 竣也 岐阜大学大学院 物質・ものづくり工学専攻 修士1年
研究領域は高分子物性。
大学では化学系を専攻し、学部4年次に高分子を扱う研究室に配属後、その研究室が特許として持つ化学フィルム・繊維の特殊加工技術に魅了され、社会実装をするべく企業との連携を図る。現在は修士課程で研究を行いながら、技術の事業化を進めている。

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