MAKERS UNIVERSITY

STUDENT INTERVIEW
塾生インタビュー

MAKERSはビジョンに対してとにかく根気強く、そして、「自分にしかみえない世界」を大切にしてくれる場所です。

都築 則彦さん

千葉大学大学院人文公共学府博士後期課程2年 / NPO法人おりがみ理事長、有限会社トウチク代表取締役

MAKERS UNIVERSITY 6期生

Q.
MAKERS UNIVERSITYに応募する前はどんな想いで、どのようなことに取り組んでいましたか?

僕は、2014年から東京オリンピック・パラリンピックに向けて、7年以上活動を続けてきました。東京2020大会という歴史的な大舞台で、日本中で若者の創造的なプロジェクトが展開され、その機会をひとりでも多くの若者が享受できる環境を作ることが僕のビジョンでした。そのビジョンに向けて取り組む中で、日本社会の「ボランティア」の文化に強い問題意識を持つようになりました。

ボランティアは本来、市民が社会に関わる権利であり、オリンピック・パラリンピックへの参画を市民の側から主張されるものであるはずなのに、その認識が全くされておらず、本来「ボランティア」と呼ばれるべきはずの自分の取り組みが、「何と呼べば良いかわからない活動」になっていたからです。

MAKERSに応募する前は、このような問題意識を持ちつつも、何から手をつけていけば良いのか、事業とビジョンの両立をどのようにすれば良いのかが全く見えず、ひとりで抱え込んでいました。

Q.
現在はどんな事業やプロジェクトに取り組んでますか?その事業やプロジェクトに挑む背景や想いも含めて教えて下さい。

現在は、魅力的なボランティアを創造し、社会や仲間と繋がる実感を届けることをミッションに、ボランティアのインキュベーション・コンサルティング・教育伴走事業の3つの柱で事業を進めています。

インキュベーションにおいては、燃焼器を成層圏に打ち上げ、地球と宇宙を背景に炎を点灯するプロジェクト(Earth Light Project)や、半世紀前に失われた上野の盆踊り大会を復活させるプロジェクト、知的障害者と駄菓子屋を経営するプロジェクトなどに取り組んでいます。
いずれも、社会学や文化人類学、社会福祉学などの学問を参照し、「ボランティアにしかない創造性とは何か」を大切に問いながら進めています。コンサルティングや教育の事業は、MAKERSの中でヒントをもらって走り始めたばかりの事業で、いずれも試行段階になっています。

Q.
MAKERS UNIVERSITYにはどんな想いや期待感で応募しましたか?

初期の期待は、ビジョンを洗練させていくことと、事業の方向性を定めていくことでした。ずっと取り組んできたオリンピック・パラリンピックが終わりを迎える中、自分の新たな軸を何としてでも確立しなければならないという焦りもありました。そのため、ライバルと激しくぶつかり合いながら、起業家としてのステップを駆け上がっていくような期待を持っていました。
特に、ビジョンを単なる絵空事ではなく、事業としっかり結びつけながら、辿り着きたい未来への足取りを確かにしていくようなことを期待していました。

Q.
実際にMAKERSに参加してみて、自身にとってどんな変容や進化がありましたか?

事業ってそんな簡単なことじゃないということを学びました(笑)振り返ると当たり前のことではあるんですが、たったの半年で、自分が生涯をかけて取り組む事業なんて決まりきるはずがありませんでした。これは、どんな起業家だって最初からそんな事業に出会うことは難しいということがわかりました。

でも、生涯をかけてつきあえる仲間とメンターに出会うことができました。このことは、初期の期待とは異なりましたが、期待していたものよりも、ずっと大切なものを手にできたと思います。ビジョンや事業は、何か完成されたモデルを作るというよりも、常に磨き続けていくプロセスのようなものだと思います。これを前提にすると、ビジョンや事業の完成度を1年間でどこまで高められたかよりも、自分が見たい世界を理解してくれて、フィードバックや機会をくれる仲間やメンターを見つけた方が、長期的に見ると価値があることに気付きます。このことを、同じプログラムの中で一緒に気付いた仲間は、自分の団体の仲間とはまた違ったベクトルで、かけがえのない仲間だと思います。

Q.
毛受ゼミが自分自身や事業に与えた影響、メンターである毛受さんとのやりとりで印象に残っていること、また、月1ゼミでの学びや気づきを教えて下さい。

毛受さんは、僕に厳しいフィードバックをくれる人です。でも、僕の可能性に期待し、育てようとしてくれる教育者です。個人的に受けた本質的な影響は、「事業における専門性とは何か」を叩き込まれたことだと思います。ボランティアのマネジメントは専門性の宝庫であり、先行事例や自分のこれまでの実績を丁寧に紐解いていけば、「他の誰もできなくて、でも自分にはできること」を見つけることができる。このことを徹底的に訓練されました。

もう少し日常的なやりとりでは、僕が抱くボランティアの可能性を、豊富な知見から次々と言語化し、ビジョンと事業を考えるヒントをくれました。例えば、ボランティアに対して漠然と抱いていた僕の課題意識は、毛受さんとの議論を通じて、「社会的企業や事業型NPOがボランティアを置き去りにした結果、関係人口が広がらずに本質的な社会課題の解決に至らない」という、ソーシャルセクター全般の課題にまで昇華されました。さらには、ゼミ生間の自己開示はかなり時間をかけて進めたため、起業家という生き方をする上でのセーフティーネットになっています。

Q.
MAKERSUNIVERSITYに入学してから、一番印象に残っている出来事は何ですか?

一番を選ぶのは難しいですが、あえて選ぶなら、夏に実施した毛受ゼミの合宿かなと思います。コロナの影響もあり、ずっとオンラインだったので、毛受ゼミメンバー全員と初めて直接会えた時はとても感動しましたし、ビジョンも事業も、議論が一気に進みました。

ただし、その前提にあったのは、何ヶ月もかけて取り組んだオンラインプログラムだっと思います。オンラインでは、一人しかしゃべることができないため、一人で考える時間を豊富に取ることができます。自分と向き合う時間と、仲間と語り合う時間をきっちりと分けられたからこその学びがたくさんあり、オフラインで会う時間を大切にしようという意識がとても高まったと思います。

Q.
MAKERSに入ったからこそ得られたことや、MAKERSがあってよかったなと感じていることを教えてください。

僕は、大学に入学してからずっと、どの団体でもリーダー的な役割を担ってきました。一方、MAKERSに集まる学生は、みんな起業家であるし、組織化もされていないため、リーダーという自分の肩書きを完全に忘れることができます。自分の肩書きを忘れながらも、事業やビジョンについて語り合い、切磋琢磨できるコミュニティは、非常に貴重だと思います。また、お互いの専門性を生かしあったり、テーマの近い人同士でコラボレーションが生まれることもあります。僕は、テーマ的に一匹狼のつもりでMAKERSに入ったのですが、とても近いテーマを扱う人と出会い、会社にとっても非常に重要な位置付けとなるプロジェクトを合同で立ち上げることになりました。

Q.
学生向けの起業支援プログラムやビジネススクールが沢山ある中で、MAKERS UNIVERSITYがそれらと違うのはどこだと感じますか?

ビジョンに対して、とにかく根気強いところだと思います。僕は長年、起業家界隈を避けてきました。ボランティアを良くしていきたいという方向性に対して、起業支援プログラムやビジネススクールという仕組みが合わなかったからです。

例えば、ボランティアにしかできないことがあるはずだ、という僕が大切に温めたかった可能性に対し、「事業化しないと継続した社会課題にならない」といったフィードバックをされてしまったり、事業のスピード感や資金調達のやり方などが株式会社のスタートアップと合わず、納得のいかないままやたらと急かされてしまった経験があります。MAKERSに応募した際には、「自分にしかみえない世界」を大切にしてくれる姿勢を感じ、ここなら自分のビジョンを早々に否定せず、根気強く一緒に考えていける環境に出会うことができると思います。

Q.
あなたとってMAKERS UNIVERSITYを一言で表すと何ですか?

「ギルド」という表現が一番近いかもしれません。
そのギルドには、起業家はもちろん、研究者やフリーランスなど、自分の見たい世界にたどり着くために、本気で自分自身や社会と向き合う若者たちが集まっています。時にはメンバー同士で連携することもあるし、ひとりで歩み続けてたまにふらっと再開する人もいる。そんな同業者組合が、MAKERSかなと考えています。

Q.
あなたの人生や事業を通じて「こんな世の中・こんな未来を実現したい!」というビジョンを教えてください。

僕が実現したい世界は、「ほっとけない」と思えるものを、全ての人が手にできる社会です。
夢でも課題でも仲間でも、「ほっとけない」という感情から何かのために頑張ることの中で、人は幸福感を感じられると思っています。しかしながら、オリンピックにおける「ブラックボランティア批判」に代表されるように、日本社会の中でボランティアというと、自らのミッションに向けて自分の意志で動いていくというイメージよりも、動員されるイメージが強いと思います。そのため、社会貢献は社会的企業や事業型NPOが担うようになっていき、ソーシャルセクターは、皮肉なことに排他性を帯びた空気に包まれているように感じます。

学生も社会人も、貧困層も富裕層も、障害者も健常者も、すべての人が、「ほっとけない」と思うものに出会い、そのプロセスの中で自己実現を果たしながら、自分自身のロマンやときめきや大切にしたい仲間、どうしても解決したい課題に少しずつ出会っていく。この権利を自然と手にできる社会が、僕が実現したい世界です。

(*このインタビュー記事は、2021年9月時点のものです)

関連URL

NPO法人おりがみ HP
Earth Light Project

メディア掲載歴

【テレビ】NHK(おはよう日本、ひるまえほっと、首都圏ネットワーク、あさイチ、オリパラ団)、テレビ東京(探究の階段)、テレビ朝日(報道ステーション)、TBS(Nスタ)、フジテレビ(Prime News Evening)、BS12(夢らぼ)、J:COM(デイリーニュース、千葉人図鑑)、千葉テレビ
【ラジオ】J-WAVE(‎SONAR MUSIC、TOPPAN INNOVATION WORLD ERA)、FM FULI(みんなのラジオ)
【新聞】読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞、サンケイスポーツ、サンケイリビング、スポーツニッポン、東京新聞、千葉日報、信濃毎日新聞、北海道新聞、山梨日日新聞、佐賀新聞、宮古経済新聞、船橋経済新聞、ほか
【雑誌】きらめきプラス、月刊ビジネスアイエネコ 地球環境とエネルギー
【海外メディア】CNN、Rede Globo(Esporte Espectacular)
※その他、WEBメディアなど多数

PROFILE

都築 則彦 千葉大学大学院人文公共学府博士後期課程2年 / NPO法人おりがみ理事長、有限会社トウチク代表取締役
千葉大学大学院人文公共学府博士後期課程に在籍。専門は地域社会学・ボランティア研究。
牛乳配達を営む家庭に生まれ、大きな世界を夢見てオリンピック・パラリンピックの最前線へ。2014年に学生団体おりがみを設立。以降、2021年まで代表を務める。NPO法人おりがみ理事長。有限会社トウチク代表取締役。Earth Light Project実行委員会代表。全国学生ボランティアフォーラム代表。2019千葉大学学長表彰受賞。

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