MAKERS UNIVERSITY

STUDENT INTERVIEW
塾生インタビュー

自分自身が宇宙分野で起業をし、未来を変えようと試みるなんて想像もしていませんでした。

坪井 俊輔さん

サグリ株式会社 代表取締役社長

MAKERS UNIVERSITY 1期生

坪井 俊輔さんインタビュー写真1

Q.
現在どのような事業やプロジェクトに取り組んでいるのか教えてください。

以前インタビューを受けた2016年当初は、株式会社うちゅうを設立して民間の宇宙教育の事業を行なっていました。現在その会社には株主として継続的に関わっています。

そして今は、サグリ株式会社の代表をしています。
サグリ株式会社は、衛星データを通じて、農業の課題を解決するスタートアップ企業で2018年の6月14日に創業し、現在約12名のメンバーで構成されています。

具体的には、衛星から世界中の農地の土壌の状況がどうなっているか、その農地が耕作されているかどうか、あるいは何の作物等が植っているのか、情報を取得することができます。
そういったデータを使って、圃場の状況把握と共に、最適な利活用のための営農指導等の提案をするというベンチャー企業をやっております。

Q.
なぜ、うちゅう教育から農業ベンチャーへと変わったのですか?

途上国の子どもたちに教育をしていた時に、農業の課題というところは非常に深刻であることを知りました。

その当時は、教育があれば子どもたちの人生を変えられるんじゃないかと思って、小学生に宇宙をきっかけに自分のやりたいことを見つけてもらう活動していました。
しかし、教育だけでは変えられないということを現場に入って感じるようになりました。

途上国には、中学高校と進学できずに、家庭の環境に縛られてしまう子どもたちがたくさんいました。その子どもたちは、お家が農家なので農業に携わらなければいけない状況でした。その現場に入ってみると、やはり農業の状況は非常に国内と比べて遅れておりアナログでした。だからこそ、その問題を解決することが状況を打破するために必要であると考えました。

そこで初めて農業にコミットしたいと思うようになり、やってみようと決心しました。

坪井 俊輔さんインタビュー写真1

Q.
今の事業に至るまでの紆余曲折や、その間にどういう試行錯誤があったのかを教えて下さい。ターニングポイントや転機などがあればそれも含めて教えて下さい。

株式会社うちゅうを設立した当初から、海外の農業に対して何かしなければいけないと思ってはいたものの、どうやって事業を伸ばしていいのかわからず、うちゅうの中の一事業にサグリを入れていました。
しかし、サグリ自体のビジネス上、外部から資金を入れて急成長させないと、絶対に失敗すると考え、2017年の10月頃に、スタートアップとして本気で取り組むことを決め、2018年6月にサグリ株式会社を創業しました。

最初は、うちゅうも自分の会社でありますし、並行して経営したい気持ちが強く、月〜金曜にサグリ、土〜日曜にうちゅうを経営する生活をしていましたが、やっぱ難しかったんですよね。
これは絞らなければいけないと覚悟を決め、2019年3月にうちゅうの経営から退きました。それが一つ大きなターニングポイントでした。

もう一つ転機があります。
実は2018年の年末から、MAKERSのメンターでもある小沼大地さんが代表を務めるNPO法人クロスフィールズの留職プログラムで、3ヶ月インドに行きました。

サグリを創業し、当初兵庫県丹波市で事業を行っていたのですが、海外の農業のこと全然わかりませんでしたし、元々創業のきっかけは海外の農業への課題感であり、その現場に入っていろいろ見てみたいと考えるようになり渡航を決めました。
インドへ行ってみると、大学時代に感じていたのと同じように、足りないことがたくさんありましたが、自分たちの技術で解決できるというビジョンが見えました。そして意外と自分でもやっていけるなと確信に思い、2019年9月にインド法人を設立することにしました。

インドに進出するにあたり、チームが半壊するなど苦難も多々ありましたが、その後インドで事業を伸ばすことができました。2019年に事業をインドに振り切ったことは、自分の中で本当にやりたいことでしたし、今となってはよかったなと思っています。

一方、コロナの流行でインドに行けなくなり、現地にメンバーを残したまま日本での事業構築を迫られる状況に陥りました。
それから、インドでの技術をモデルに、日本で事業展開を行うとそれが日本ではまり、売り上げがすごい勢いで伸びているという状況です。2021年は、1.55億円の資金調達もでき、さらに事業を成長させようというフェーズに入りました。
チームが半壊しましたがインドに進出したこと、うちゅうの経営を退く決断をしたことの二つが、最大のターニングポイントでしたね。

坪井 俊輔さんインタビュー写真2

Q.
MAKERS UNIVERSITYに応募する前は、どのようなことに取り組んでいましたか?

大学は工学部の機械工学科で、ロボットや機械を作ることがとても好きでした。
そして、宇宙に関する研究室に所属し、宇宙の研究をしていました。
その時は、宇宙の研究者を目指していて、やりたいことができている自分に幸せを感じていました。

一方で、海外に行くのがとても好きで、何度もバックパックで海外に行っていました。
大学の長期休暇の半分以上は海外へ行って、いろんな地域の現場見て刺激を受けているような学生でしたね。

Q.
MAKERS UNIVERSITYにはどんな想いで応募をし、参加しましたか?

私は自分自身が宇宙分野で起業をし、未来を変えようと試みるとは考えていませんでした。
なぜなら長い間、自分が考えていることは多くの人には理解されずに過ごしてきたからです。そんな環境にいるなかで私はいつのまにか自分自身の限界を勝手に決めつけてしまっていたのかもしれません。

そんな時、MAKERS UNIVERSITYのFB広告で流れてきた文章に出会いました。最初は僕が今まで感じてきたことを全て代弁し、肯定してくれるような内容だったのです。

私は今まで、色々なことに取り組んできてはいたけれど、MAKERS UNIVERSITYほど私に適した環境はないし、ここで自分自身の本気を試してみたいと感じ、応募をしました。

Q.
実際にMAKERSに参加してみて、自身にとってどんな変化がありましたか?

ここに参加して、まずは自分自身の価値観が変わりました。いや想定を遥かに超えて覆されたと言いましょか。いままで出会ってきたコミュニティーのなかでここまで自分自身のことを受け入れてくれるコミュニティーはありませんでした。

私はそんな大切な仲間であるMAKERS UNIVERSITY生と共に切磋琢磨していく中で、自分自身のやりたいことがとても磨かれていきました。
自分のやりたかったことを発見できたことだけでもとても大きいのですが、その後に自分の成し遂げたいことへ挑戦するためにMAKERS UNIVERSITYではメンター制度や様々なブラッシュアップ&アドバイスのサポートをしてくださいます。
その機会を得ることができたことで、私は段階的に成長し、自立ができるようになったのだと思います。

Q.
あなたにとって、一番印象に残っている出来事は何ですか?

私にとって一番印象に残っているのは、MAKERS生の中でも起業を試みている仲間たちで集まるコミュニティでのブラッシュアップした日々です。
そのコミュニティでは、毎日のように仲間たちと語り合い、自分自身のプランをブラッシュアップしていました。

そんな中で何度も挫折しそうになっては、助け合いを繰り返し、最後には共に握手を交わし合ったことが今でも忘れられないです。
その時、私は本当にMAKERSっていいコミュニティだな。MAKERSの仲間たちと一緒に本気で世界を変えていこうと思えた瞬間でした。

Q.
丸ゼミが自分自身や事業に与えた影響、メンターとのやりとりで印象に残っていること、また、月1ゼミでの学びや気づきを教えて下さい。

今もリバネスの丸さんは、弊社の経営顧問をして下さって、今でも定期的にお会いし大変お世話になっています。

MAKERSに入塾した当初、自分自身は他のMAKERS生と比べて非常に劣っていたように感じます。何かやりたいという思いはとてもありましたが、事業をしているわけではなく、ただ研究をしているだけでした。自分自身が世の中を変える事業を起こせるとは全く思っておらず、大学のフィットしない環境から抜け出したいと漠然と感じていました。
2月に行われた事前カリキュラムで、初めてお会いした丸さんに、プレゼンをする機会がありました。自分自身の思いや、こういう技術を使ったらこういうことができる!とプレゼンをしましたら、なんと丸さんから厳しい意見やお叱りをもらいました。

それが自分の中でとても衝撃で、何がいけないんだろうと思わされた最初のきっかけで、丸さんについて行ったら何か変わるかもしれないと思い、丸ゼミに入ることを決めました。

丸ゼミは、毎月のメンタリングで1ヶ月でどこまでできた進捗を報告し、1ヶ月前より成長しているところを実感しつつ、自分にないところを指摘していただくような会でした。

私はMAKERS期間中の6月に、株式会社うちゅうを勢い余って創業したのですが、その時、丸さんにまず落ち着けと、とても止められました。その時は全然大学に行かなくなり、卒業できるかもわからない、いっそのこと大学もやめてもいいぐらい思っていました。
11月に開催された1期のデモデイは渋谷ヒカリエで行われました。
その時に、丸さんから会場の皆さんへ「こいつは俺が止めたんだけどやったんですよ。起業しちゃったんですよ。だけどこいつは本気だから起業して今やってる。本気だからこそ絶対やめないし、絶対に成功する」と言ってくださいました。

それが自分の中では、この上ないほど嬉しかったですね。
このゼミに入ってよかったと思えたし、丸さんから惜しみなくいろいろなご支援を今もいただき続けている状況です。

Q.
学生向けの起業支援プログラムやビジネススクールが沢山ある中で、MAKERS UNIVERSITYがそれらと違うのはどこですか?

MAKERSのコミュニティー内では、メンター・ボードメンターさんたちと呼ばれる方々が他分野に渡り、私達を全力でサポートして下さいます。そこは特に他のプログラムと違う点の一つであるといえます。またそんなMAKERSのコミュニティーには普通の人とは少し変わった人たちが多くいて、そういうとこに感化されながら学べました。そこに集まってきてるメンバーは一人ひとりが何らかの思いをもって集まっており、自分自身と感じてきたことが近しい人もいれば、全く異なる分野で自分自身が考えもしないようなことをやってる人もいます。そのようなコミュニティーは他の場所ではなかなか感じることができないのではないかなと思っています。

Q.
あなたとってMAKERS UNIVERSITYを一言で表すと何ですか?

MAKERS UNIVERSITYは私自身のこと、私自身が考えてきたことをしっかりと受け止め、認めてくれるコミュニティーであり、最高の仲間との出会いを与えてくれた場所です。このコミュニティーは私にとってのサードプレイスのようなもので、様々なセッションを通じるなかで沢山の学びを私に届けてくれました。その学びを活かせば、きっとみなさんも自分自身の考えがブラッシュアップされ、新しい社会を作るMAKERS生の一員として活躍するためのサポートを受けることが出来るかと思います。

坪井 俊輔さんインタビュー写真3

Q.
MAKERSのカリキュラムが終了後5年経過しましたが、今MAKERSに対してどんな思いがありますか?

MAKERSUNIVERSITYが続いているということが第一に嬉しいなと思ってます。

最初は3年間は続くがそれ以降はわからないというプログラムだったんですよね。
それを思うと、支援者さんもたくさん増えて、コミュニティーが継続していることで、
僕自身も全く知らないMAKERS生がたくさんいて、たまに出張しているとMAKERS生たちと出会うんですよね。それが自分の中では嬉しいです。

一方、MAKERSには本当にお世話になったのに、まだ何も恩返しができてないことにちょっと悔しさがあります。
丸さんとの出会いも、MAKERSから始まったものですし、早めに会社として成長して、MAKERSに還元していきたいという思いはずっと持ち続けています。

昔は、5年ぐらい経ったらある程度は個人的に支援ができるかなと思っていましたが、やはりまだまだ未熟です。だからもっと成長しなくてはと思っています。

Q.
MAKERSでの経験や学びが今に生きていることはありますか?

人のために何かをするということを考えられるようになったのは、MAKERSの影響がとても大きいです。

それまでの自分は、自分自身に酔っているというか、何かと世間体や横との比較を気にし、自分が生き抜くことにとても意識が向いてしまっていました。
しかし、応援してくださるメンターの方々は、明らかにレベルとしては劣ってる自分を一生懸命育ててくれるというような仕組みを見て、とても価値観が変わりました。

自分を育ててくださった方々のように、自分自身も、人のためにあり続けたいと思うようになりました。

Q.
あなたの人生や事業を通じて「こんな世の中・こんな未来を実現したい!」というビジョンを教えてください。

私自身は本当にディズニーが好きな人間で、幼い頃からこうなりたいなと夢があり、それが実現したらいいなと思っていたのですが、現実はそうではないということを、中高を通じて自覚していていきました。
しかし今は、もっと世の中の一人一人が自分のやりたいことを持ち、それにチャレンジすることを応援し合える社会だったら幸せだなと本気で思っていて、そういう状況が溢れるように事業を進めていきたいです。

だからこそ、教育ということに力を入れていますし、根本的に強いられている環境そのものを変えたいんですよね。
農業は、世界の人口の約3分の1の人々が関わっていて、それだけインパクトがある業界です。しかし、農業というものがしなければならない仕事となっており、自分のやりたかったことができてない現状があります。

それが技術によって打破され、次の世代の子どもたちが農業を選ぶことももちろんできますし、何か違う仕事を選ぶこともできるというような未来を作りたいです。
そうしたら、とても幸せな社会になるかなと思っています。

(*このインタビュー記事は、2021年10月当時のものです)

関連URL

サグリ株式会社 / Sagri Co., Ltd

その後の活躍

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坪井 俊輔さん

PROFILE

坪井 俊輔

SAgri株式会社 代表取締役社長

横浜国立大学理工学部機械工学科に所属し、土壌と機械の相互作用分野(テラメカニクス)の研究室に従事している。MakersUniversity1期生で、株式会社リバネスの丸幸弘氏のゼミを通じて、民間宇宙教育の会社の立ち上げを行う。その後、DMMアカデミー1期生を経て、衛星データを通じて、農業課題を解決するサグリ株式会社を設立。農林水産省デジタル地図を活用した農地情報の管理に関する検討会委員、iU専門職大学校の客員教授なども兼務している。

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